韓国のテ〜ハミング!!

 6月19日の韓国対フランス、韓国はトーゴ戦の一勝に加え更に有利にリーグ戦を運営するためには、フランスに最低引き分けの結果が必要だった。そして結果は1−1の同点!韓国の応援に参加していた私は光化門でのすさまじいまでのテ〜ハミング合唱を始めて体験した。
 試合は前半始まってすぐアンリがオフサイドぎりぎりのラインを抜け出し安定したゴールを入れ先制点をものにした。それから後半の終盤までフランスは追加点にまでは至らなかったが、ほぼ完璧なディフェンスで韓国は効果的なシュートまで試合を運ぶことができなかった。しかし試合終了間際の残り10分で泥臭くパク・チソンがゴールをもぎ取った。チャンスをつくれなかった韓国チームが執念でものにした劇的なゴールだった。全力で最後まで諦めないひたむきなサッカーを見せてくれた。
 私はこういった素晴らしいプレーを見せてくれる韓国代表チームのプレーをここで強調したいのではなく、雅に国家を上げて応援する韓国について少し疑問を感じずにはいられなかったのである。日本にもある「がんばれ日本」の応援にまず目を向ける必要があることは重々理解した上で、韓国の応援文化について少し話をしたいと思う。
 韓国では現在WC熱でニュース、CM、広告、企業、すべてがサッカー一色である。サッカー選手の勝利がまるで国家の勝利、そして国民の勝利であるかのような宣伝や発言が耳につく。韓国の友人が「日本はだめだねー」と言われることも多い今大会だが、私は意地悪く自分なりの試合分析をこまかく答えることにしている。それは日本が負けたからといって私が負けたわけではないし、サッカーの大好きな私は、サッカーそのものを見ることが好きだ。日本という国家が負けたというような発想には到底いたらない。(国家が負けたとしても興味はないが)逆に韓国の友人にはおめでとうと、一言かけるがそれも何かおかしい。彼らが応援しているチームが勝ったことはうれしいが、彼らがそれによって誇れるものはなにもないからだ。友人の質問がサッカーの試合そのものを見て発言しているならなんら問題はない、しかし私が意地悪く詳しい分析の内容を発言すると、そんなことはどうでもよさそうだ。
 韓国では、クロアチア日本戦を韓国人とソウル在住の人々が集まって一緒に応援する企画があった。そこで日本人の人々に韓国の応援文化について少し意見を聞いてみた。「留学に来て、こうやって韓国人の友人と一緒になってテ〜ハミングを叫ぶのは楽しい。しかし韓国代表が勝つことで韓国そのものが勝ったような錯覚に陥ることがある。2002年のワールドカップアメリカ戦でゴールを入れた韓国代表の選手がショートトラックのスケートの真似をしてパフォーマンスを行った。サッカーとなんら関係のないスポーツを出してアメリカをあざ笑うかのようなパフォーマンスはおかしい。」という意見だった。
 日本ではどうなのか、このブログでも紹介しているが「日本スポーツ・ジャーナリズム研究会」のコラムの中で、◇W杯で愛国心宣揚狙う?◇http://homepage2.nifty.com/FSJ/tushin/179.htmlという以下のような記事が載っていた。
『日本代表23人が決まって、マスメディアの日本代表応援報道に熱がこもっている。日本代表への期待を煽るばかりなのだが、5月16日には川淵三郎日本サッカー協会会長が先導して日本代表の中心選手が皇居に招かれ、天皇の激励を受けた。その足で官邸にも向かい、小泉首相の励ましも受けた。 まるで国家あげての日本代表応援と言わんばかりである。 五輪選手団の結団式に皇族や政府代表が参加して激励するのは常だが、大会前に天皇や首相が自ら選手を励ますシーンを演出するのは異例のことだ。 同じ日に、「国家の求める愛国心」教育をゴリ押しする教育基本法改悪案の実質審議がスタートするのと歩調を合わせた政治的イベントのにおいがした』

 この記事のように、せっかく様々な文化と歴史、政治的な背景を持った国々が国際的に開かれるスポーツイベントによってあつまり、国境を越えて世界的な視野を広げる機会であるにもかかわらず、その広い視点を失い、自国の素晴らしさを国民に伝え、愛国心をあおうようなメディアと自国主義的な応援が多いことは残念なことではないだろうか。